PER とは PER = 株価 ÷ EPS(1株あたり利益) で表される、最も基本的な株価評価指標です。「その株を今の利益で何年かけて元が取れるか」を表します。
PER は 「今年の利益」だけを評価軸にする ため、急成長企業を不当に「割高」と判定してしまいます。
| 店舗 | 店の値段 | 今年の利益 | PER | 5年後の利益 | 本当の魅力 |
|---|---|---|---|---|---|
| A店(老舗) | 1,000万円 | 100万円 | 10倍 | 100万円 | 普通 |
| B店(新店、行列) | 1,000万円 | 20万円 | 50倍 | 320万円(+1500%) | 圧倒的 |
PER だけ見ると A店 が「圧勝」(10倍 vs 50倍)。しかし、B店 は5年後に A店の3倍稼ぐ 会社です。PER は未来を無視するから、こうした判定ミスを起こす — これが CPER 設計の出発点。
100万円を金利5%の銀行に預けると1年後 105万円。これが 成長率 5% と同じ意味。数式: 来年の値 = 今年の値 × (1 + g)
毎年同じ金額が増えるのが 単利。「増えた後の金額」に成長率がかかるのが 複利。複利は雪だるま式に大きくなります。
| 年 | 単利(毎年+40万円) | 複利(前年×1.4) | 差 |
|---|---|---|---|
| 0年目 | 100万円 | 100万円 | — |
| 3年目 | 220万円 | 274万円 | +54万 |
| 5年目 | 300万円 | 538万円 | +238万 |
| 10年目 | 500万円 | 2,893万円 | +2,393万 |
5年で約 1.8倍、10年で約 5.8倍の差。これが 複利の魔法。
n年後の利益 = 今の利益 × (1 + g) × (1 + g) × ... × (1 + g) ← n回かける
= 今の利益 × (1 + g)n
(1+g)n は「n年後に利益が何倍になるか」を表す 雪だるまの最終サイズ。これが CPER の分母の核心です。
1989年、伝説的ファンドマネージャー Peter Lynch は『One Up on Wall Street』で、こう提案しました:
「成長してる会社の PER が高いのは当たり前。PER を成長率で割って評価すべきだ。」
これが PEG レシオ: PEG = PER ÷ 成長率(%)
| PEG値 | 判定 |
|---|---|
| < 1 | 割安 |
| 1 - 2 | 適正 |
| > 2 | 割高 |
PEG は成長率を「線形で1回だけ」割引く。複利成長を無視する。成長率が 40% の会社が5年継続するなら、利益は 5.4倍 になるはず。なのに PEG はそれを評価しない。
PEG は成長率が 2倍 → 評価も 2倍。CPER は成長率が 2倍 → 評価が 6〜10倍。これが 線形 vs 指数 の違い。
CPER = PER / (1 + g)n
= (株価 / 現在EPS) / (1 + g)n
= 株価 / [現在EPS × (1 + g)n]
= 株価 / 将来EPS
CPER は、本質的には 「n年フォワード PER」 と等価です。つまり「n年後の予想EPSをベースにしたPER」。違いは:
| CPER値 | 判定 | 意味 |
|---|---|---|
| < 3 | ★ 強い割安 | n年後の利益で見ると元が3年で取れる |
| 3 - 7 | ◎ 適正 | 合理的な評価水準 |
| 7 - 15 | △ やや割高 | 成長持続が前提なら許容 |
| > 15 | × 割高 | ナラティブ・プレミアム超過 |
CPER は4つの変数からなる:
| 記号 | 名前 | 意味 | 数式での位置 |
|---|---|---|---|
| P | 株価(Price) | マーケットでの値段 | 分子 |
| E | EPS(1株あたり利益) | 企業が稼ぐ力 | 分母(PER内) |
| g | 成長率(growth) | EPSが毎年何%増えるか | 分母の指数の中 |
| n | 年数(years) | 何年先を評価するか | 分母の指数 |
| 変数 | 動かすのは誰か | 投資家の制御 |
|---|---|---|
| P | マーケット全体 | × できない |
| E | 企業業績 | × できない |
| g | アナリストコンセンサス | × できない |
| n | 自分(投資家) | ○ 唯一コントロール可能 |
4変数のうち、投資家が動かせるのは n だけ。そして次章で見るように、n は4変数の中で最もレバレッジが大きい。
→ 「投資家の最大の武器は、忍耐の長さ」 ということが数学的に証明される。
基準値(ALAB現状: P=$325, E=$3.00, g=52%, n=5, CPER=13.52)から各変数が10%動いた時の CPER 変化率:
g と n は両方とも指数の中にいる。g が 10pp 上がり、かつ n が 1 年伸びるだけで、CPER は 半分以下 になる。逆も真。これが「強気→弱気」の局面で株価が乱高下する正体。
n は表面的には「年数」だが、実質的には 「自分が何年待てるか」のダイヤル です。
| 投資家タイプ | 適正 n | 同じ ALAB の見え方 |
|---|---|---|
| デイトレーダー | 0-1 | PER 108 そのまま、狂気 |
| スイング/モメンタム | 1-2 | CPER 50-80、明確に割高 |
| 中期投資家 | 3-5 | CPER 14-33、判断が分かれる |
| 長期投資家(Buffett型) | 7-10 | CPER 4-10、適正〜割安 |
| 終身保有 | 15-20 | CPER 0.3-2、笑える割安 |
ALAB が一日で 10% 動くのは、ファンダメンタルではなく、市場参加者の「平均 n」が日々動いているから:
業績は1ミリも変わらないのに、参加者の n だけで株価が30%動く。
| 変数 | 方向 | 現実世界のトリガー |
|---|---|---|
| P | ↑ | 決算ビート、業界テーマ買い、空売り買戻し、FOMO |
| E | ↓ | 粗利率圧迫、希薄化、為替逆風、一時的損失 |
| g | ↓ | ガイダンス下振れ、顧客減速、競合の台頭、コンセンサス改定 |
| n | ↓ | 金利上昇、リセッション懸念、ナラティブ揺らぎ |
| 変数 | 方向 | 現実世界のトリガー |
|---|---|---|
| P | ↓ | 決算ミス、マクロパニック、利益確定 |
| E | ↑ | 利益率改善、自社株買い、コスト削減 |
| g | ↑ | 新規大口顧客、TAM拡張、コンセンサス上方修正 |
| n | ↑ | 金利低下、ナラティブ強化、長期ビジョン浸透 |
P: -20% → CPER ×1.20(割高化) E: -15% → CPER ×1.18 g: 52%→35% → CPER ×1.77 n: 5→3 → CPER ×1.82 複合: ×3.04 CPER 13.5 → 約 41 へ急騰(割高度が3倍に)
P: +30% → CPER ×1.30 E: +10% → CPER ×0.91 g: 52%→65% → CPER ×0.65 n: 5→7 → CPER ×0.37 複合: ×0.28 CPER 13.5 → 約 3.8 へ急落(適正ゾーン突入)
自分で4変数を動かして、CPER の挙動を体感してください。
現在のシミュレータ入力(P, E)を固定し、g と n を変化させた時の CPER をヒートマップで表示。シミュレータの値を変えると自動更新します。
主要 AI/半導体・ビッグテック銘柄の実データ。列ヘッダをクリックでソート。
| Ticker | カテゴリ | 株価 ($) | FY26E EPS | PER | g (%) | PEG | CPER(3) | CPER(5) | 判定 (n=5) |
|---|
2026年3月、イラン戦争に伴う米株急落時、ALAB を $100 で買い集めた事例。当時のファンダメンタル:
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 株価 P | $100 |
| FY26E EPS(当時のコンセンサス) | $2.46 |
| g_blend(当時) | +37.8% |
| PER | 40.7x |
| n | (1+g)n | CPER | 判定 |
|---|---|---|---|
| 3年 | 2.62 | 15.54 | △やや割高(境界) |
| 5年 | 4.97 | 8.18 | △→◎境界 |
| 7年 | 9.44 | 4.30 | ◎適正 |
| 10年 | 24.86 | 1.64 | ★割安 |
| 要因 | 購入時 → 現在 | 寄与 |
|---|---|---|
| EPS 改定 | $2.46 → $3.00 | +22%(業績寄与) |
| 成長率 g 改定 | 37.8% → 52% | +14pp 上方修正 |
| PER 拡大 | 40.7x → 114.3x | +181%(マルチプル寄与) |
マクロパニックでマーケットの n が縮んだ瞬間に、自分の n を変えなかった — これがすべて。 イラン戦争で ALAB の Scorpio X design win は1個も消えない。 ファンダメンタルが無傷なのに価格だけ下がっていた = CPER(n=5) 8.18 という「許容範囲」のシグナル。 これを長期 n=7 のレンズで見れば「適正」、n=10 なら「強い割安」だった。
マーケットの平均 n は日々変動する。自分の n を一定に保てるなら、「他人の n が縮んだ瞬間の割安価格」 を機械的に拾える。これが CPER から導かれる投資哲学:
CPER の数式 PER ÷ (1+g)n を「指標」として明示的に命名・流通させている先行研究は確認できなかった。 ただし概念的・数学的にほぼ同一の議論は複数存在する。
| 研究者/出典 | 年 | 距離 | 内容 |
|---|---|---|---|
| Kevin Zatloukal (Medium) | 2024 | ★★★ | 「earnings grow by (1+G)n factor」と CPER の発想を明示展開。ただし最終形は PE − 100G という線形近似に丸めて提案 |
| David P. Addis (SSRN #2138483) | 2012 | ★★★ | "Growth Adjusted Price to Earnings Ratio and Implied Growth Rate" — タイトル・問題意識が最も近い学術論文 |
| Aswath Damodaran (NYU Stern) | — | ★★ | 2段階 DDM から PEG を理論導出。指数成長を扱うが PEG として線形化 |
| Murugesan (SSRN) | — | ★★ | "Why PEG Based DCF Valuation is Flawed" — 線形 PEG の批判 |
| Sam Rainsy (SSRN) | — | ★★ | "PEG or PPP" — 複利を扱う代替指標 Potential Payback Period を提案 |
Forward PEn = Price / EPSn
= Price / (EPS0 × (1+g)n)
= (Price / EPS0) / (1+g)n
= 現在PE / (1+g)n
= CPER
つまり CPER は 「g を一定と仮定したときの n 年先 Forward PE」 と完全に同一。
Wall Street Prep, Stock Analysis 等の Forward PE 解説でも暗黙に示されている関係。
「PER と g の関係は線形ではない、PEG は単純化しすぎ」という議論は、CFA Institute, Damodaran, Guinness Global Investors 等いずれも明記。「指数版 PEG」を明示式で提案している論文は確認できず — Zatloukal が最も近いが、彼は実用上線形近似に戻している。
「PEG の指数版」「Forward PE の g 明示版」という位置付けの提示と、判定基準の言語化が CPER の独自性。 数式の発明ではなく、「忘れ去られていた指数版」を実務に呼び戻し、シミュレーション可能な形に整理した点に価値がある。
CPER = PER ÷ (1 + g)n
PER = P / E (1+g)n = 複利倍率 将来EPS = E × (1+g)n フォワードPER(n) = P / 将来EPS CPER = P / [E × (1+g)n] = フォワードPER(n)
∂CPER/∂P = 1/[E × (1+g)n] → Pに線形、+1%でCPER+1% ∂CPER/∂E = -P/[E² × (1+g)n] → Eに逆比例、+1%でCPER-1% ∂CPER/∂g = -n × CPER/(1+g) → gのレバレッジは n/(1+g) ∂CPER/∂n = -CPER × ln(1+g) → n を 1延ばすと CPER × 1/(1+g)
PEG = PER ÷ (g × 100) # 線形除算 CPER = PER ÷ (1+g)n # 複利除算 g = 0 のとき: CPER = PER(複利なし) g > 0 のとき: CPER < PER(評価緩和) n = 1 のとき: CPER ≈ Forward PER n → ∞ のとき: CPER → 0(無限の忍耐は無限の割安)
S&P500 の歴史的平均 PER 約16倍を「適正の上限」と仮定すると、5年後の同等評価 = CPER 16 / (1.10)5 = 約10。 そこから「ゆとり」を持たせて 7 を「適正の上限」とし、その半分の 3 を「明確な割安」とした。